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シーン

ここではコンテンツの配置(レイアウト)や表示範囲の調整方法(クリッピングや画面スクロール)についてのデザインガイドをご紹介します。

空間を認識する手がかりを作る

仮想オブジェクトの立体空間を出すためには、はじめに説明した直方体の仮想空間(Spatial Reality Display view space)を認識できる手がかりとなるものを配置するとよいでしょう。

まずは、ボトムスタンドと中のコンテンツが地続きになるよう床面を置いてみましょう。 仮想空間の床面と現実の床面(スタンド)が地続きに見えることで空間内の床面が正しく水平に置かれていることが感じられ、よりリアリティをもった表現になります。
また左右のサイドパネルと面を一致させた側壁を仮想空間内にも置いてやることで、現実世界と仮想空間に一体感がもたらされ、まるでその場に四角箱が存在するかのように感じられるはずです。
また直方体の奥方向にも仮想の壁を配置してやることで直方体領域を感じやすくなります。
このように現実の物理的な面や形状と、仮想空間の面を極力一致させることで物理的なパーツが「手がかり」となり立体空間の表現力が高まります。
もちろん実現したい世界やコンテンツによってはこの限りではありませんが、このように空間を感じる「手がかり」をどこに置くか、を常に意識してオブジェクトを配置すると箱庭的な空間表現力が高まるとともに、見ている人が疲れずらい自然な見え方を実現することが出来ます。
また表示するコンテンツはこの Spatial Reality Display view spaceの四角箱の中になるべく納まるように配置すると多くの人に見やすい自然なコンテンツを制作することができます。

左右端には飛び出すオブジェクトを置かない

下記図のような特に手前側の上部左右の端にかかる仮想オブジェクトは、視聴位置によっては視差映像の画欠けが起こるためり奥行が認識しずらくなるため、立体感が損なわれます。仮想オブジェクトは手前上部左右端にはできるだけ置かないようにするとよいでしょう。

動きのあるアニメーション表現などでやむを得ず左右端にオブジェクトが配置される可能性がある場合は、映像が画面端に近づくにつれてだんだんと視差が無くなるよう消えていくように、例えばVignetteなどの処理を行うと良いでしょう。

手前と奥の使い方

直方体の仮想空間(Spatial Reality Display view space)の範囲を飛び越えるエリアまでオブジェクトを置くことで、オブジェクトがより手前にまで飛び出して見え、インパクトのあるコンテンツになります。しかし、手前に飛び出した表現を長時間見せ続けるとと視聴時の身体負荷が大きくなるため、一時的な表現にとどめ、効果的に手前のエリアを利用するのが良いでしょう。

また奥行き方向も極端に遠景となる表現を多用すると融像しにくいため人によっては酔いの原因になることがあるため避けたほうがよいでしょう。一方で、大きな奥行きの描画をすると融像しにくいため避けるようにしてください。

メインオブジェクトの配置

立体的な空間表現が可能なディスプレイですが、視聴者は実際は「斜めに配置された物理的なディスプレイ面」に目のピントを合わせています。このためメインとなるオブジェクトはこの斜めの物理的なディスプレイ面のどこかに必ずかかるかたちで配置すると良いでしょう。例えば四角い仮想空間の手前上部と奥の下部だけにオブジェクトを配置したりすると実際に目がピントを合わせている物理的なディスプレイ面の位置と融像するイメージのズレが生じ違和感を覚えることがあります。

かならずメインオブジェクトが物理的なディスプレイ面上に置かれた状態をつくり、サブのオブジェクトを手前や奥側に配置することで自然な立体空間を作り出すことで、疲れにくい快適な視聴体験を提供できます。

SDKによるクリップ

前述した様にSpatial Reality DisplayではSpatial Reality Display view space内に表示したいオブジェクトのを配置することが、見やすい表示を実現するためには理想的ですが、表現したい世界やコンテンツによっては Spatial Reality Display view space の直方体のエリアからはみ出すような映像を提供したい場合もありえます。この場合、どこから見ても飛び出したオブジェクトが映像から欠けない様に配置する等の注意が必要です。 Spatial Reality Display view space からはみ出る位置に配置されたオブジェクトは視聴位置によっては画欠けを起こしやすく、立体感や視認性の低下につながります。これを避けるためには、面と天面でオブジェクトを自動的にクリッピングするような表示方法も有効です。Spatial Reality Display SDKでは、Spatial Reality Display view spaceの前面(ディスプレイ下端から垂直に立つ平面)から手前には表示を行わない、クリッピング処理ができるよう準備しています。

SDKによるクリッピング処理の詳細はSpactial Clippingを参照してください。

表示領域の移動

箱庭空間を表示する

Spatial Reality Displayが表示している立体空間全体が大きく移動していると、目の疲れや3D酔いなど視聴時の身体負荷が大きくなります。 Spatial Reality Displayで最も視聴しやすいコンテンツは、表示する立体空間を固定したコンテンツで箱庭的な表現になります。 ユーザーの動きによる運動視差以外の視差変化がないため、疲れや違和感を感じづらくなります。基本はこのような「箱庭的」表現を意識し、空間の画面全体が固定された状態で、空間内の個々のオブジェクトを動かしたりキャラクタを動かすような表現にすると良いでしょう。

表示領域の並進移動

表現したいコンテンツによっては、空間全体をスクロールしたり大きく移動させたいケースもあるでしょう。表示領域を動かすことでダイナミックな視聴体験を実現できますが、酔い等を誘発する身体的負荷の要因になることがあります。

演出のために表示領域全体を移動させたい場合は、移動方向を奥行方向のみか、横方向のみなど一方向に限定することをおすすめします。同時に2方向に移動したり、回転するような複雑な動きは極力避けたほうがよいでしょう。これは一般的な動画のカメラワークなどと同じでダイナミックな表現が可能になる一方、人によっては酔いやすい表現にもなります。極端な画角変化や大きなモーションは避け、スムーズにゆっくりと移動させるなど工夫すると良いでしょう。