「マジカルミライ」クリエーターインタビュー①
2021年11月に幕張メッセで開催された「マジカルミライ2021」企画展に、「空間再現ディスプレイ(Spatial Reality Display)」(以下SRD)を出展しました。
SRDを活用した新しいインタラクティブな体験をお届けするため、 xR/VRの業界で活躍中の6名のクリエーター様にコンテンツを制作していただき、展示を行いました。
この連載では、コンテンツの見どころ、制作のコツなどについて、それぞれのクリエーター様にお伺いしたインタビューを数回に分けてご紹介します。SRDの活用方法、新しい体験の参考になれば幸いです。
今回は「Escape Miku!」制作者のこりんさんへのインタビューです。
作品名: Escape Miku!
クリエーター名:こりん
SNSアカウント:Twitter @korinVR
Unityエンジニア。2013年にOculus Riftの開発キットを入手して個人でVR作品の制作・展示活動をしていたらいつのまにか本業に。4年間の施設・イベント向けVRコンテンツ制作を経て、株式会社エクシヴィにてOculus Questアプリ開発を行う。著書に「VRコンテンツ開発ガイド 2017」(共著)。XR Kaigi 2020・2021、CEDEC 2021にて登壇。
Q1) 作品のコンセプト、見どころを教えてください。
「Escape Miku!」は箱庭型の脱出ゲームです。ミクさんが部屋に散らばっている音符を集めるとドアが開き、ドアから出るとゲームクリアです。
今回、制作のお話をいただいたときに、どんなものを作ればELF-SR1の特徴をアピールできるだろうかと考えました。ELF-SR1は裸眼で立体視ができるディスプレイですが、とりわけ、筐体の形状に沿った直方体の空間の中に3Dモデルを配置すると、その中に本当にオブジェクトが実在するかのように見えます。そこで、舞台を箱庭の部屋にしようと思い立ち、ミクさんがとことこ歩きまわって脱出するゲームにしてみました。
さらに、いくつかの音符を横や上からしか見えない場所に配置して、プレイする方に、頭を動かしていろんな方向からのぞき込むことができるディスプレイだと自然に気づいてもらえるようにしています。
まさにSRDの特性を把握して開発していただいた作品だなと感じました。部屋の空間がSRDの中にしっかり再現されていて、様々な角度から見ることで音符のアイテムを発見できるなど、従来のディスプレイではできなかった体験が実現されています。特に、キーボードは立体的かつ空間表現に適した場所に配置されていて「すごい」とびっくりしました。
Q2) クリエーター(開発者)視点で特に工夫した点、こだわった点など教えてください。
ミクさんの髪揺れとそのパラメーター調整に特にこだわっています。繰り返しになりますが、ELF-SR1はオブジェクトが本当に実在するかのように見えるディスプレイなので、いわゆる揺れものは効果絶大です(余談ですが、髪揺れをメインに持ってきたウダサンのコンテンツは「分かってるな」と思いました)。
また、隠れた場所に音符を置いたりしているため、プレイヤーにヒントを表示する必要があったのですが、漫画の吹き出しが「そこにある」と面白いのではと考えて、吹き出しをアニメーション表示してみました。こちらもELF-SR1ならではの表現になったと思っています。
なるほど「揺れもの」ですね。あとヒントも素晴らしいなと思いました。SRDを知っている人ならすぐにできるゲームも、初見の人には理解してもらうのが難しい。でもヒントが絶妙なバランスで出てくるので「あ、なるほど」とスムースに理解できて短い体験時間の中でもしっかり楽しめるようになっています。
Q3) SRDを使いこなす上でのコツがあれば教えてください。
直方体の空間の中の光や影をきちんと表現すると実在感が増します。Unityのリアルタイムシャドウやライトマップを活用してみましょう。「Escape Miku!」ではさらにポストプロセスで色彩を強調しています。
箱庭型のコンテンツを制作する場合は、横からのぞき込んだときに端の方の表示が不自然になることがあります。いろんな方向からのぞき込んで確認しましょう。
フェイストラッキングによるCPU負荷がだいぶ高いので、できるだけ高性能なPCを使用するのがおすすめです。
その他メッセージや今回のイベント参加の感想など一言あればお願いします。
今回コンテンツを制作する側としてマジカルミライに参加できて、ミクさんに会いたい! と来てくださった方々に体験して喜んでいただいて、とても嬉しかったです。ありがとうございました!
ありがとうございました。